太陽と緑、そしてAI

 明治7年8月改正の「小学読本巻4」は地球の仕組みを述べた明治初期の小学生用の教科書である。その第6項の書き出しをそのまま再掲すると
「天地間ノ動植物皆其生ヲ遂クルコトヲ得ルハ、太陽アルヲ以テノ故ナリ」
とある。こんな明治初期の小学生に教えられていたことを忘れたエネルギー政策を政府はやり続けている。
 国会で議論されるべき国のエネルギー基本計画において、原子力エネルギーを今後も利用し続けるという方針を政府は閣議で決めた。運が悪ければ首都圏も居住不可能になっていたであろう福島原子力発電所の事故のことを全く考慮に入れない愚策と言わざるを得ない。

この論考で述べたように地球上の生命圏は、太陽エネルギギーによって育まれてきたものであり、そのエネルギーを人間を含む動物が利用できる形に変換しているのは植物に他ならない。最近身の回りで、その基本原理を無視した営みが数多く行われている:

(1) 森の伐採とメガソーラー: 日本国中で森や緑地が伐採されて、多くの太陽光発電のためのパネルが設置されている

TDU理工.jpgこの写真は、埼玉県にある東京電機大学理工学部周辺のメガソーラーである。生命にとって必需である酸素や食料・材料の元となる植物ではなく、太陽エネルギーが直接電気エネルギーに変換されている。人間や動物は電気エネルギーは”食”することはできない、電気エネルギーを”食”できるのは、ロボットだけである。

(2) 消える街路樹・庭の植栽: 東京都が神宮外苑の街路樹を伐採することが大きな問題となっていたが、近所の街路樹も歩行者の邪魔になるとして、すべて伐採された。また、京都市でも最大幅の道路である堀川通でも道路中央にあった街路樹が、写真のようにDSCN0948.JPG綾小路以南で伐採されてしまった。また、最近の新築の家を見ていると、敷地をすべてコンクリートで覆い、植栽はしないという家が増えてきている。生命にとっての緑の重要さが忘れられたかのようである。

(3) 政府のエネルギー政策では、近年とくに発達してきているAI技術のために、今後大量のエネルギーが必要とされ、地球環境を破壊してまでもエネルギー源を確保しようとされている。AIは将来のロボットの知能部分となるものであり、このロボットを”生かす”ためにすべての太陽エネルギーが使われることになれば、「太陽⇒植物(デンプン・セルロース)⇒人間・動物」という流れで成り立っている地球上生命圏が、非効率な植物や動物をなくした「太陽⇒ロボット」という疑似生命圏へと変換されることが危惧される